私たちの頭に生えている約10万本の髪の毛。実は、それらが一度生えたら永遠に伸び続けるわけではありません。一本一本の髪の毛には、それぞれ独立した寿命があり、生まれ、成長し、やがて抜け落ち、そしてまた新しく生まれ変わるという、決まったサイクルを繰り返しています。この髪の毛の一生の流れのことを「ヘアサイクル(毛周期)」と呼びます。このヘアサイクルを正しく理解することは、抜け毛や薄毛の悩みの原因を探り、適切な対策を講じるための、全ての基本となります。ヘアサイクルは、大きく分けて三つの期間から成り立っています。成長期(せいちょうき):髪の毛が活発に成長する期間です。毛根の奥深くにある毛母細胞が、毛細血管から栄養を受け取って盛んに細胞分裂を繰り返し、髪の毛を太く長く伸ばしていきます。髪の毛全体の約85〜90%がこの成長期にあり、その期間は男性で3〜5年、女性では4〜6年と、非常に長く続きます。退行期(たいこうき):髪の成長が止まる期間です。毛母細胞の分裂が停止し、毛根は徐々に萎縮して、頭皮の浅い部分へと押し上げられていきます。この期間は非常に短く、約2週間程度。全体の髪の約1%がこの状態にあります。休止期(きゅうしき):髪が抜け落ちるのを待つ期間です。成長が完全に止まった髪の毛が、ただ毛穴に留まっているだけの状態です。この期間は約3〜4ヶ月続き、全体の髪の約10〜15%がこの段階にあります。そして、この休止期の毛穴の奥では、すでに次の新しい髪の毛(新生毛)が生まれ、成長を始めています。この新生毛が伸びてくるのに押し出される形で、古い休止期の髪の毛は自然に抜け落ちるのです。これが、健康な人でも毎日50〜100本の髪が抜ける「自然脱毛」の正体です。この絶え間ないサイクルがあるからこそ、私たちの髪は常に一定の量を保つことができるのです。