遺伝子検査はAGA診断になるのか?

投稿日2021年2月22日 投稿先 抜け毛

AGA遺伝子検査キットが手軽に入手できるようになったことで、「この検査を受ければ、自分がAGAかどうかわかるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、ここで明確にしておくべき重要な点があります。それは、AGA遺伝子検査は「AGAの確定診断」にはならない、ということです。遺伝子検査でわかるのは、あくまで「AGAを発症しやすい遺伝的なリスク(体質)を持っているかどうか」であり、現在AGAを発症しているかどうか、あるいはどの程度進行しているかを判断するものではありません。AGAの診断は、医師が様々な情報を総合的に評価して行います。まず、患者さんの訴えや症状の経過、家族歴などを詳しく聞く「問診」。次に、薄毛の部位やパターン(M字型、O字型など)、頭皮の状態などを直接観察する「視診」。そして、ダーモスコピーやマイクロスコープといった特殊な機器を用いて、毛髪の太さ(軟毛化の程度)、毛髪の密度、毛穴の状態などを詳細に評価する検査。これらの診察所見に基づいて、AGAであるかどうか、そしてその進行度を判断するのが、医学的な診断プロセスです。遺伝子検査の結果は、この診断プロセスにおける「参考情報の一つ」にはなり得ます。例えば、典型的なAGAの症状が見られ、かつ遺伝子検査でもリスクが高いと判定されれば、AGAである可能性がより高まります。しかし、遺伝子検査の結果だけでAGAと診断したり、逆に症状があるのに遺伝子リスクが低いからAGAではない、と判断したりすることはありません。また、薄毛の原因はAGAだけではありません。円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、他の脱毛症の可能性もあります。遺伝子検査では、これらの他の脱毛症を鑑別することはできません。したがって、もし実際に抜け毛が増えたり、薄毛が進行したりといった症状がある場合は、遺伝子検査キットの結果に頼るのではなく、必ず皮膚科やAGA専門クリニックを受診し、医師による正確な診断を受けることが不可欠です。遺伝子検査は、あくまで将来のリスクを知るためのツールであり、現在の状態を診断するものではない、という点をしっかりと理解しておきましょう。